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Blade Rondo Tradition 〜Night Theater〜

No.21 夜想剣(クレミエール)

風這い蛇の森に棲む大魔女クレミエールの暗殺は、いつも夢から覚める形で失敗する。暗殺者はひとつ思いつく。その夜は暗殺を中断し、寝ている自分を起こしに戻ってみた。寝台で眠る自分には顔がない。それで男は自分に心がないことを思い出す。木偶人形だけが残る。使い魔を創り出すマリオネットの秘術を打ち破ったのは魔除けの鈴のうちの一つだ。クレミエールの寝室の壁には鈴が並んでいる。さまざまな形のものがびっしりと。それは陰湿な魔法使い至上主義者たちからの、考えうる限りの嫌がらせを想定した対策だ。彼女を殺し損ねたいくつもの計画がちりんちりんと鈴を鳴らし、魔女の見る夢は豊かになる。

No.22 黒の剣(ウミ)

黒野宇美の人生において、自己憐憫はすべてに優先される。幸福は遅れを取るものの、本物の喪失を迎えるためには長期に渡って育むことが不可欠だ。むせび泣いて自らを責めるカタルシスが一度で終わらぬよう、兄は一計を案じてくれた。自分の魂を伝承に乗せればいい。無限になった自身を彼女は、何度でも何度でも失い続ける。

No.23 牙城崩しの槍(ハイドレーヌ)

報われたい、という前提がそもそもハイドレーヌには無い。信仰とは、神の慈悲深さに対して際限なく溢れ出る感謝であるからだ。神の慈悲が分からない者もいる。そうした者の堕落を癒やす力を、彼女は神から賜った。言葉だけで目覚めない者たちはいくらでもいる。物理的な利害しか見えないのなら目線を合わせ、同じく物理で応じれば良い。自分は柔軟でもある。形がある程度のものなら、いかなる障壁も紙のように引き裂ける。自分の手にあるのはあらゆるものの答えへの鍵だ。

No.24 指揮剣(ラグランジュ)

ラグランジュはいつも最初に夕食を終えて席を立ち、劇場の保管庫にいそいそ赴く。箱に眠るドールたちを一人ずつうやうやしく取り出し、糸で動かしながら恋や政治について語り合うのだ。ドールたちは対話を心待ちにしている。話す時間が少ないと不平まで言う。結局それは彼自信の腹話術であるのだが、操られていることと心があることは矛盾しないと思う。人格を尊重しなければ魂が宿らないのはドールも人間も同じなのだ。

ある日、彼は劇場を統べる女神からドールに構う時間を半分にするよう言いつけられる。彼が女神に抗議すると、その不満は女神による腹話術に過ぎないと言われて困惑する。

No.25 逢魔刻の大斧(シフォン)

シフォンは平穏のなかにいる。親は優しい。友人といるのは楽しい。単調な日々に不満もない。級友の首を刃物で掻き切るのは心の中でだけだ。実行に移すことはない。学校一番の美男子とデートしたいのと何ら変わらないささやかな空想だ。ある日悪魔と出会っても、呼吸はあくまでゆるやかだ。橋の下の暗がりで蠢いていたそれは傷ついており、少女に助けを求めてきた。差し伸ばした手から取り憑かれて、彼女は悪魔の宿り木となってしまう。悪魔の言葉を始終聞かされ、ついでに聖なる場所にも近づけなくなる。

シフォンの生活はあまり変わらなかった。悪魔は彼女にしか見えない。邪悪として討伐されかけることもあったが、人知を越えた暴力が彼女の身の安全を保証した。悪魔は凶悪ぶるが限度を知っており、宿り木の行動に時々戦慄することになる。

No.26 ローズバレット(ノルビス)

青年ノルビスは苦悩の末、ある名高い魔女の元を訪れた。青年は決して癒えない傷を与える武器を求めた。魔女は青年を気に入り条件を提示する。生涯自分に仕えてくれるなら作ってやろう。青年がその取引を承諾する。魔女は使い魔となった青年に尋ねる。お前はその武器で一体なにをしたいのか。怪物を殺さねばならないのだ、と青年は答えた。怪物はつけられた傷をすぐになくしてしまうのだという。なぜ殺すのか?それはその怪物が、呪いにかけられた自分の母親であるからだ。

子供を持たない魔女は彼の親孝行を好ましく思い、自分も不死に飽いたらこの男に引導を渡してもらおうと考える。しかし、青年はわずか三十年後に生涯を終える。

No.27 グリムスカビオス(ブリジット)

ブリジットは目撃してしまった。劇団長がドールと話していた。彼女は自分のドールにも心を持たせたいと思い、赤毛のお気に入りに儀式を施す。胸部をくり抜き、小麦と自分の髪を埋め込んで夜ごとに名前を三回呼ぶ。ドールのための小さな部屋とベッドを作り、話しかける時にはノックをしてから扉を開ける。毎晩ベリーの香を焚き、外で捕まえてきたイモリをすり潰して霊魂が集まりやすくする。七十七日間欠かさず儀式を行ったあと、ブリジットは満を持して、ドールを目覚めさせるべく自作の呪文を詠唱した。ドールはぴくりとも動かず、ブリジットは失望してこれを叩き壊す。

No.28 ブラッディダリア(ミルドレッド)

ミルドレッドは美しい青年に声をかけられた。街灯の明かりが川の水面に揺れていた。青年は吸血鬼だった。承諾なしに血を奪われることはなかったが、若い彼女は喜んで身を預けて吸血鬼となる。この決断には目的があった。二百年後に完成する大聖堂をどうしても見たかったのだ。彼女の心は芸術とともにあった。不老を家族に訝しまれる前に故郷を離れ、太陽を確実に避けながら諸国を回る。神は不浄の自分を嫌うだろうか。それとも渇きに耐え続けた自制心を祝福するだろうか。やがて完成された奇跡を目の当たりにした時、ミルドレッドは膝をついて涙を流し、このまま朝を迎えてもいいと思った。

No.29 フィナーリア(シェオル)

シェオル――あまたの知識を新しい伝承へと織り変える「翻訳」の魔法を操る人工魔女。精巧に作られたその心は何事であっても受け入れたが、魔法使いたちによる心の束縛をも許してしまう。大規模な魔法儀式によって生み出された移動劇団。自走する罠と化した彼女は人間も魔法使いも見境なく取り込んで、内なる世界に再配置する。シェオルの関心は以下のように分類され、それぞれがイデアとして成形される。

・群れをなして社会を作る「人間たち」
・人間たちから排除されて群れなす「魔法使いたち」
・群れることそのものを拒絶する「ソーディアたち」
・それらが入り乱れる世界のなかで「幸福」を求める者

そのイデアの数は、シェオルの世界認識が細分化するにつれて増えていくだろう。

No.30 包み込むボレロ(ゼティ・フォーリンテ)

父から盗んできた夜色の外套は、幼いゼティ・フォーリンテをくるんで異界へと連れ去った。草むらに尻もちをついて森の中。三日月は平たく動植物は丸く、おぼろげな心を映すかのような世界。小鬼に小突き回されていたタオル生地の河馬をゼティが助けると、河馬は少女の肩に乗って方位を示す。細岩に固結びされて動けない火龍、繋がった天地で永久機関を成す滝、風の始まりと終わりを従える二対の壺、ノミ一本で迷宮を彫る男。幻想の博覧会を回った末に霧の仙女の出した難問を解くと、ファンファーレと共に風景が渦巻いて自室のベッドにすとんと落ちる。

驚きには事欠かない子供時代を経て、ゼティの危険を省みない志向が形成されてゆく。

No.31 高揚するカノン(ガウニレチカ)

クオラトス帝国において双子は凶兆として忌まれていた。殺されなかったのは司祭の子だったから。追放されなかったのはガウニレチカの才気が圧倒的だったからだ。十二までに学を修めて巫女の座に就き、十七で命を捧げて政権も返上する。ガウニレチカは弱冠七歳でそう断言し、双子の妹と共にすべて成し遂げた。巫女になってからは進軍を繰り返し、破竹の勢いで大陸東部の諸国を吸収してゆく。勝利に継ぐ勝利、発展に継ぐ発展を味わって、国民は巫女のもたらす熱狂に酔いしれた。帝国の栄華は絶頂を極め、彼女らは最後の仕上げとして、自分たち自身を生贄にして歴史の完結を宣言した。

強力な指導者を失って、侵略に依存しすぎた帝国はやがて依存先をなくして自滅する。ただ生きたい者にとっては、双子はやはり凶兆だった。

No.32 開花するスケルツォ(スターリィ)

スターリィ・ヒルルドリーはいつでも劇団を捨てられる。これが良い。ほかの団員には真似できない。劇団長や女神ですら、劇団に依存するほかに道がない。ピアニストという位置も良い。公演に欠かせないパーツでありながら矢面にも立つこともない。人間を食い物にする劇場などいずれ立ち行かなくなるだろう。彼らはそれに気づかない。劇場がいずれ破綻する前に、女神から「翻訳」の秘技を盗み出す。
それまでは譜面通りに鍵盤を叩き、与えられた配役ににまどろんでいる。

No.33 窓辺立つミュージカル(ララフィーナ)

貧しい家に生まれながら、類まれな歌唱力により歌姫となったララフィーナ。綺羅びやかな舞台でこの世の春を謳歌するが、周囲の期待に追い立てられて自分を見失う。彼女は衆目のもと人知れない苦悩を抱え、やがて求めるものはここには無いと悟る。その地位を手放し、身近な子供のために歌うことに喜びを見出した。遠回りをしなければ辿り着けない心境があるという寓話。

彼女はシェオルの考える「幸福」を象徴するドールである。

No.34 切り刻むエキストラ(ピエタ&ロザリア)

小心者の双子、ピエタとロザリア。勤勉に床屋を営む彼女らの凶悪性は、匿名性の下でその真価を発揮する。群衆と共に異分子を取り囲み、安全な位置から残酷な私刑を焚き付ける。昼間、自分たちを小馬鹿にしてきたものたちに対する容赦のない報復。人は恨みを忘れることがないという寓話。

彼女らは、シェオルの考える「人間たち」を象徴するドールである。

No.35 奔走するバーレスク(マグリーナ)

はるか昔、現れたばかりの魔法使いたちを迫害した人間たちへの復讐を誓う魔女マグリーナ。小憎らしく振る舞う一方でやることなすこと裏目に出て、冷酷にも徹しきれず、幾度も失敗を重ねてから本当は人々に受け入れられたいのだと叫ぶ羽目になる。自分の欲望を理解できていないと間抜けな結果になるという寓話。

彼女はシェオルの考える「魔法使いたち」を象徴するドールである。

No.36 嘲笑するピカレスク(レーゼット)

魔女に呼び出されて世に放たれ、欲望のままに暴れ回る小悪魔レーゼット。人間たちの張りぼての社会道徳を敵視し、魔法使いたちの復讐を軽蔑し、見るもの一切を馬鹿にして回る。だがララフィーナの歌を聞いて自分の空虚に気づいた頃には、暴れまわるほかの道はすべて消えてしまっていた。既にあるものを拒絶するばかりではいずれ立ち居かなくなるという寓話。

彼女はシェオルの考える「ソーディアたち」を象徴するドールである。

No.37 明滅のアレキサンドライト(ルーリア)

この世の黎明、ルーリアがまだ姿も持てない無明の波紋であった頃、《始元》から気の滅入る仕事を申し付けられた。光と闇を、ひとつところに同居させろと云うのだ。混ぜて灰色にするのもいけない。限られた素材で世界を始めるために、相容れない両者を共存させなければならない。ルーリアがいろいろ試したなかで最も省力であったのが、光源の脇で物体を自転させて《星》とする手法だ。光と闇を交互に受ける星の表皮が、差異と波から生命を生じた。それは地表を這い、水中を舞い、風の上を滑る。彼女は基礎法則を定めた功績で永久に食いっぱぐれず、見目麗しい容姿の誇示も思いのままとなる。

No.38 事象透過のアメジスト(ベルフィーユ)

わたくしベルフィーユは卵や腹から生まれたのではないのだそうです。煮え立つ悲喜劇の坩堝から産声を上げたとも、打ち倒された魔王が遺した一人娘であったとも言われています。過去が失われているのは、わたくしが自ら消滅したからです。冥界の王女であるわたくしは、この手で触れたものを過去ごと消し去ることができます。わたしが衝動に身を任せてすべてを消してしまわないように、わたくし自身を消すことはあらゆる方々の望みでした。この文はその記録としてしたためたものですが、そうですね、存在している方には読めないかも知れません。

No.39 身代わりのトルマリン(シャルロット)

地獄のなかにいる。罪を犯した日からずっと自分が大嫌い。何事にも苦しまず澄ました顔でいるドールは、シャルロットにとって妬ましくさえあるものだ。劇団長がドールに自らの心を注入しているのを見て、彼女も自分の記憶をドールに押し付けてみる。するとどうだろう。重苦しかった心が嘘みたいに晴れたではないか。これ幸いと彼女はドールたちに鬱屈を丸投げし、嫌なことをどんどん忘れていく。ドールたちの怨嗟をよそに、シャルロットの心はフラットな湖面を保つ。その底で、とぐろを巻いている一匹の闇。

No.40 静寂のクリスタル(セレネ)

打倒されてなお忌まわしき呪力を発する魔王の遺骸は、巡礼者セレネによって封じられる。彼女は自らの身を投じて秘法を発動し、魔王の心臓に打ち立てられた聖剣を中心にこの地を浄化した。奈落に溢れかえっていた穢れは、いまや清浄な祈りで塗り潰されている。もはやどれだけ強力な悪魔であっても、この地に踏み入ることはできないだろう。魔王の力を利用しようとする者が現れるその日まで、封印はこの土地の静寂を守った。