木の根で複雑に起伏する森の中を、素早く走るのは難しい。
しかも大地が断続的に揺れるとあっては。

あなたは必死で逃げていた。
追いつかれてはならない。決して。あんなものと戦うなんて冗談じゃない。
あなたもソーディアだ、戦いを望んではいた。強敵との出会いも大歓迎だ。
だがそうは言っても、幾らなんでも限度というものがあるだろう。

振動と視界不良のなか、戦いで培った運動勘を総動員して木々の間を抜けるルートを組む。
目の前の木は右によけて、その先の窪みは一気に跳び越える。お次は根伝いに左前方へと進路を変えて。
だがその道は使えなくなった。大きな壁が立ち塞がったからだ。
小枝をばきばきと折って倒れてきたそれは、この森に生えている巨木の一本だった。
あなたの背丈ほどもある太さがそのまま、壁の高さとなって行く手を阻む。
跳び上がってその木に乗ろう。と踏みしめた木の根が、あなたを裏切ってぼきりと折れた!

あなたは巨木の下の窪みに滑り落ちてしまう。

「ヴウォォォオオオオオ!」
あなたも声をあげたのだが、怪物の雄叫びにかき消される。声量でも敵わない。
《フスカス》……牛の頭をたたえた巨人。その豪腕の前には、人体など綿のように脆いものとなる。
伝承では分別を備えた使用人であるはずだが、なぜあなたが追われる羽目になるのか……

土まみれの体を起こし、落ちたついでに巨木の下を潜り抜けて向こうに出る。走れ走れ。
しばし森を駆けると視界が開けた。行手に地面がない。崖だ。
眼下には川が流れている。水流は強く、点在する岩をよけてうねり、飛沫をあげていた。
「バフウウウウウワアアアアアアア!」
無闇に凶暴な雄叫びが、どんどん大きくなっている。近づいてくる。やめろ。

水面に打たれないよう祈りつつ、あなたは感情を切り離して身を投げた。
殺意を漲らせた巨人を説得することに比べると、いくらか安全に思えた。

たっぷりと流されて距離を稼いだ。いくらかの猶予は持てたのでこのまま撒きたい。
あなたは岸に這い上がり、よろよろと歩き出した……

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